40年以上のクライミング史を持つSiuranaを、今も魅力を失わない代表的なセクターとともに紹介します。Siuranaは世界中のクライマーにとって重要な岩場で、ヨーロッパのほかの地域が寒くなる季節には、行き先の有力候補になります。
春と秋は特に賑わい、登りやすいコンディションに恵まれることが多いですが、クリスマス休暇にも多くのクライマーが訪れます。真冬には日当たりの良い南向きのセクターを選ぶことができます。その名を聞くだけでも寒さを忘れそうなSolariumも、その一つです。

背後にSierra de Montsantを望むSiuranaの風景
Siuranaの歩み
Siuranaでは、40年ほど前に開かれたルートと現在の初登が、同じ岩場に共存しています。1980年代のほかの岩場と違い、ここはボルトを設置し、ホールドと足場を自然な順序でたどるスポーツクライミングの岩場として開拓されました。
Joan Chaparro、Eduard Burgada、Joan Olivé、Joan Cabauらの先駆者が開拓を始め、その後も多くの人が続きました。開拓は着実に進み、Siuranaは世界的な目的地となりました。世界のトップクライマーもここを訪れ、その可能性は尽きないように見えます。2023年3月にはChris SharmaがEl PatiでSleeping Lionを初登し、9b+を提案しました。2024年の初再登後、Alex Megosは9bを提案しています。
歴史に残る瞬間
女性のクライミング史を象徴する写真の一つが、La Ramblaを登った直後のMargo Hayesの姿でしょう。彼女は女性として初めて9a+を登ったことを実感していました。このルートの元のラインは1994年にAlex Huberが初登し、現在よく知られる延長版は2003年にRamón Juliánが初登しました。Sleeping Lionが初登されるまでのように、未登のプロジェクトを目指して世界の強豪が集まる一方、ここではオンサイトやフラッシュにも挑戦します。2013年にAlex MegosがEstado Crítico(9a)をオンサイトしたのは、その象徴的な例で、史上初の9aオンサイトでした。
Siuranaの地図
Siuranaのセクターは、Cornudella de Montsantへ向かう道沿いに広がっています。位置の目安として、海岸側のTarragonaから車で約1時間、内陸のLleidaからは約1時間半です。周辺には、Vilanova de Pradesのように小規模で比較的混雑の少ない岩場もあります。約30km離れた有名なMargalefと組み合わせて旅をする人も少なくありません。MargalefとSiuranaにはそれぞれ2,000本以上のルートがあり、前者は主に礫岩、後者はセクターごとに性質の異なる石灰岩が特徴です。
長いルートも多く、持続的で密度の高い登りが続きます。指の力に加え、パワー持久力と持久力が問われるテクニカルなクライミングを楽しめます。
Siuranaのエリア
2023年版のガイドブックはDavid BrascóとNatàlia Campilloが制作し、Siuranaの広大な岩場を五つの大きなエリアに分けています。各エリアには多数のセクターがあります。ここではSiuranella(Sud、Centro、Est)、El Pati、Esperó Primavera、Can Piqui Pugui、La Capellaという五つのグループを紹介します。それぞれがこの地のクライミングの魅力と歴史の重要な章を伝えています。このうちいくつかは、1990年代末から2000年代初頭の「Master of Stone」や「Dosage」にも登場しました。
2023年版ガイドには、開拓者と開拓年だけでなく、見逃せないセクター、おすすめのルート、グレードより登りやすいと広く見なされるルートについての情報もあります。方角、アプローチ、駐車場や岩場の位置も掲載されており、訪問を計画する際に役立ちます。
Siuranella SudとCentro:この二つだけで休暇を過ごせるかもしれません

Siuranella CentroのEl Ploramiques、8a
Siuranellaは、多くの面でSiuranaの中心といえる場所です。楽しむために9aを登る必要はなく、幅広いレベルのクライマーを受け入れます。Siuranella Sudは代表的な冬向けセクターで、7a以上を無理なく登れる中上級者に適しています。約30本のルートは22~30mで、クラック、コーナー、指先の技術が問われるフェースなど、岩の表情も多彩です。足元が平らで日当たりが良く、アプローチも約15分と比較的短いため、冬は家族連れを含め多くの人が訪れます。Siuranella CentroはSudの壁の続きで、午後遅くにはやや早く日陰になります。約70本の大半は7a~7cですが、6a~6cも10本近くあり、強いクライマー向けの8aもいくつかあります。見事な景観は、このセクターでの一日を特別なものにしてくれます。両セクターには本数と質の点でさまざまな選択肢がありますが、自分の技量に合うルートを選んでください。
Siuranella Est
Siuranella Estは、多様なルートとスタイルがあり、どれも強度の高い素晴らしいセクターです。大半は7a~7cで、6bや6cは定番のウォームアップルートとされています。高所感のある立地も特徴で、多くのルートの取り付きへは、固定ロープと鉄のステップが設けられた短い区間を通ります。アクセスの状態を確認し、必要な技術と装備がある場合にだけ通行してください。取り付きとなる岩棚は、独特の雰囲気を生みます。SudやCentroから自然につながる壁ですが、ガイドでは主に別の駐車場を利用することからエリアBに分類されています。周辺のFontscaldesはハイカーにも人気があり、車やバンの駐車場所を探しにくいことがあります。特にParet des Diedresでは、各ルートの長さ、アクセス、下降方法を最新のガイドで確認してください。対象ルートの下降に十分な長さのロープを選び、支点を確認し、ロープの末端に結び目を作ってください。
El Pati
Siuranaを代表する伝説的なセクターの一つがEl Patiです。冒頭で触れたLa Ramblaのほか、Golpe de Estado(9b)やEstado Crítico(9a)といった高難度の名ルートがあります。8台のルートが中心で、6a~7cは20本弱ですが、訪れる価値があります。ルートは40~45mに及ぶこともあり、高いパワー持久力と持久力が必要です。登る前に実際の長さと下降に必要なロープ長を確認してください。南西向きのため午後の早い時間まで日陰で、オーバーハングした一部のラインは雨を避けられる場合もあります。それでも雨後は岩やアプローチの状態を必ず確かめてください。駐車場からのアクセスは比較的簡単で、若いクライマーも見学しやすい場所です。スポーツクライミングの歴史と人々に触れられるこのセクターを、ぜひ見てみてください。

2022年のSiurana Climbing Festivalで、L'OllaにてKlemen BečanをビレイするChris Sharma
Esperó Primavera

Esperó PrimaveraのBruna、8a
これまでのセクターは主に中上級者向けでしたが、Esperó Primaveraには6a~6cを中心に楽しみたいクライマーにも選択肢があります。ほぼ南向きで、見事な岩、10分未満のアプローチ、平らで快適な取り付きがそろい、冬に多くの人が訪れます。1990年代に見いだされてボルトが設置された歴史的なルートもあり、Siuranaのクライミングを象徴するセクターの一つです。
Can Piqui Pugui
歴史と魅力を兼ね備えたCan Piqui Puguiには、1992年の開拓当時、Siuranaとカタルーニャで初の8cだったL’Odi Socialがあります。ホールドが欠けた後、現在は一般に8c+とされています。同じ壁には、Ramón Juliánが2004年に初登したChikane(8c+)や、Alex HuberとToni Arbonésがボルトを設置し、Rich Simpsonが2006年に初登して8c+/9aを提案したA Muerteなど、高難度の名ルートが並びます。より登りやすい歴史的なルートには、Yuji Hirayamaが1991年にボルトを設置したGamba Gamba(7b)や、Hirayamaが地元のArbonésとBrascóとともにボルトを設置したSaiko Dase(6b+)もあります。短く強度の高い登りを好む人には12mほどからのルートがあり、30mの持久力を要する名ルートもあります。スラブや緩いオーバーハングがあり、午後遅くに日陰になります。

Ca la BojaセクターのLa Loca Mas Loca Del Bodevil、7b
La Capella
La Capellaは小さめのセクターで、大きなプロジェクトを目指して訪れる人が多い場所です。7a~7cは数本だけで、その先には極めて難しいルートが待っています。よく知られるKing CapellaはDavid Brascóがボルトを設置し、Will Bosiが2021年に初登して9b+を提案しました。その後Jakob Schubertは再登後に9bを提案しています。ほかにも8a以上のルートが多く、特に高難度を求めるクライマーを惹きつけます。それでも訪れる価値は十分にあります。ガイドに記された駐車場から約2分歩くだけで、この印象的なオーバーハングを見ることができます。
Siuranaのガイドブック著者David Brascóに聞く
David、ここまで一般に『クラシック』とされるセクターを紹介しました。その多くは上級者向けですが、初心者や中級者におすすめのセクターを教えてください。
こんにちは。極端な高難度以外にも目を向けていただき、ありがとうございます。初級から中級のクライマーにも選択肢はたくさんあります。Barranc del MarroとFontscaldesの周辺ではL'HerbolariとEsperó Primaveraをおすすめします。Siurana川周辺ならCan Gans Dionis、Can Marges、Can Parasit、Ca L'Orro、Grau del Masets esquerre、Grau dels Masets de Baix、Can Maquis、El Ditotなどです。挙げなかったセクターにも、ぜひ見つけて登ってほしい小さな名ルートが数多くあります。有名な場所だけに限らず探してみてください。地元のクライマーに尋ねるのもよいでしょう。初心者向けの選択肢は少なめですが、Belbedere de l'Esperó Primavera、Mr. Pin、Can Weekend、Can Marges、Can Parasitをおすすめします。
Siuranaはクリスマス休暇にも人気です。真冬に登るなら、どのセクターをおすすめしますか。
風があまり強くなければ、Siuranella CentroやReina Moraのような南向き・南東向きのセクターがよいでしょう。北西から強い風が吹くときは、Can Piqui PuguiやGrau dels Masetsのような南東向きの場所を選ぶほうがよいです。もちろんほかにもたくさんありますし、最終的には各自の好みと『パワー』次第です!
最近ボルトが設置されたセクターはどこですか。
最近は、まったく新しいセクターの開拓はあまりありません。登れる岩が少なくなってきています! 比較的新しいのは、Belbedere de l'Esperó PrimaveraやMr. Pinのような初心者向けに開拓された場所だと思います。
年月が過ぎてもSiuranaは世代を超えてクライマーを刺激し続けています。世界中で支持される理由は何だと思いますか。
クライミング旅行を計画するときに考える多くの条件が、これほどそろった場所はなかなかありません。ルートと岩の量や質、近隣のほかの岩場、アクセスのしやすさ、美しい景色、多様な宿泊施設、便利な旅行環境があります。岩がもっと良い場所や、もっと美しく快適な場所は世界にあるでしょう。でもSiuranaほど多くの魅力が一か所にそろう場所は、なかなかないと思います。
Siurana Climbing Festival

Siurana Climbing Festival 2022
2023年11月、SiuranaではSiurana Climbing Festivalが開催されました。岩でのクライミング、技術を学ぶ機会、スポーツクライミングに関する交流が続く3日間でした。
2023年の開催日は11月10日から12日で、Cornudella de Montsant周辺にてEl Pati、Esperó Primavera、l’Olla、Siuranellaの各セクターでのワークショップに加え、写真家やヨガ指導者との交流も行われました。
今後の開催日とプログラムは、Siurana Climbing Festival公式サイトで確認してください。
写真:©LiqenStudio_ Tenaya _ Siurana Climbing Festival 2022
David Brascó、Siurana Climbing Guidebook











