2021年8月公開のアーカイブ記事です。クライミングシューズのモデルを特徴づける主な違いの一つが、アッパーの素材です。特に部分的な補強や細部には新しい工夫が次々と登場していますが、レザー、合成素材、両者を組み合わせたアッパーのどれを選ぶかは、今も最初に検討したいポイントの一つです。
こうした素材の基本的な特徴は、グローブなど、ほかの山の装備にも共通します。それに加えて、アッパーの素材選びは、岩場や屋内での性能に深く関わるさまざまな細部にも影響します。クライミングに夢中な人にとって、その違いが大切になることもあるでしょう。

レザー
レザーのクライミングシューズは、まず履き心地のよさが特徴です。天然素材のレザーは長く柔らかさを保つことがあり、履くうちに足になじんで伸びる傾向があります。ただし、その変化の大きさは、裏地、レザーの厚さ、ラバー、モデルの構造にも左右されます。クライマーにとっては、伸びる可能性を考慮してサイズを選ぶということです。何ハーフサイズ下げるといった一律のルールはなく、メーカーの案内と、痛みを伴わずに足にぴったり合うフィット感が重要です。
スエードレザーは、快適さと足の形へのなじみやすさを備えることがあり、クライマーにも人気があります。ただし、スエード仕上げというだけで、シューズが伸びにくいと判断することはできません。ここでも、それぞれのモデルの裏地と構造が関係します。
レザーのアッパーは、Stickitのような子ども用シューズにも見られます。スエードレザーは、初心者向け、オールラウンド向け、マルチピッチ向けの多くのモデルにも使われています。長いルートでは、ボルダリングや岩場のシングルピッチを登るときよりも、当然シューズを長時間履くことになります。マルチピッチを登る人にとって、快適さはほぼ欠かせない条件になります。通気性も同様ですが、素材が天然かどうかだけでなく、裏地、部分的な素材の使い方、構造にも左右されます。Alex Honnoldがビッグウォールを単独で登る際に愛用するTC Proもスエードレザー製で、歴史ある伝説的なMythosも同じです。
ただし、レザーを、攻めた形状ではないシューズや性能を重視しないシューズ専用の素材と捉える必要はありません。例えばLa Sportivaは、中級者や経験豊富なクライマー向けのMiuraのレースアップ仕様と面ファスナー仕様、あるいはPythonにも使用しています。SCARPAも、Jungleのように、起毛加工をせず、内部まで染色していないレザーを採用しています。
合成素材
合成素材のシューズは、似た構造のレザー製シューズに比べて伸びにくい傾向があり、元の形を長く保つことがあります。ただし、履くうちに多少なじむことまで完全にないわけではありません。合成素材のクライミングシューズは、最初の試し履きから足によく合うものを選びましょう。レザー製の場合でも、伸びれば履いたときの痛みが解消するはず、と期待するのは適切ではありません。
同程度の構造で比べると、マイクロファイバーはレザーより伸びにくい傾向があります。これは、好みによって利点にも欠点にもなります。ただし、だからといって必ず硬いわけではありません。シューズ全体の剛性には、ミッドソール、ラバー、テンション構造も関係します。例えばオーバーハングで足を自由に動かしたいなら、分割されたソールを検討するのも一案です。反対に、スラブなどでサポートを求めるなら、一体型ソールと支持性の高い構造を検討するとよいでしょう。
「プロ」のクライマーはマイクロファイバーを好むことが多い、と「うわさ」されることもあります。SCARPAの「Performance」カテゴリーには、この素材を使ったモデルがいくつもあります。例えばレースアップのInstinctは、足を包み込むように設計された、複数のマイクロファイバーパネルによるアッパーを採用しています。2021年の記事で紹介したChimeraは、機能性マイクロファイバーの8枚のパネルに、通気性と耐摩耗性を高めるための穴あきTPU層を組み合わせています。合成素材のアッパーを使うブランドは数多く、Wild ClimbはWild Microfiberを採用しています。Evolv、Ocun、5.10にも、この種の素材を使ったモデルがありますが、それぞれのブランドの全製品が同じ素材という意味ではありません。
複合素材
レザーとマイクロファイバーの部分を組み合わせる構造は、この記事で紹介する技術志向のモデルにもいくつか見られます。快適さや足へのなじみやすさといったレザーの特徴と、形状の安定性や耐久性といった合成素材の特徴を生かすことで、高い性能を持つシューズを作ることができます。ただし、快適さ、通気性、反応のよさは、構造の中で素材をどう組み合わせるかによって変わります。
レザーのパーツは、シューズ前部の足指の下や、フットベッドに使われることがよくあります。これをAlcantaraのパーツとは区別する必要があります。Alcantaraはレザーではなく、合成素材です。SCARPA BoosticとBoosterは、複数のマイクロファイバーパネルによる構造に、親指の周りのAlcantaraパーツを組み合わせた例として、2021年の本文に登場していました。一方、SCARPAの素晴らしいDrago LVでは、レザーとマイクロファイバーの部分を組み合わせています。2021年に開催された東京2020オリンピックでも、多くの女子クライマーが履いているのを目にしました。
La Sportivaは、当時新しかったKuboに、裏地のないマイクロファイバーのアッパーと、スエードレザーのフットベッドを採用していました。スエードレザーとマイクロファイバーは、SolutionやSolution Compにも使われていますが、各モデルの構造はそれぞれ異なります。Alex Megosが使用するTenayaのIatiも、レザーとマイクロファイバーを組み合わせ、足を包むように設計されています。実際のフィット感は、足の形とモデルによって変わります。

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